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AI活用

エントリーシートはAIで書く時代?
新卒採用の実態と、人事が取るべき5つの対策

加藤 貴之株式会社Cradle 代表取締役/MBA(HR専攻)
ノートパソコンでエントリーシートを読む採用担当者
加藤 貴之

皆さんこんにちは!株式会社Cradle代表の加藤です。

新卒採用を担当している人事の方から、「最近のエントリーシートは、明らかにAIが使われていて、どれも同じようなものばかり」という声をよく聞くようになりました。その背景にあるのが、学生の生成AIの利用です。

今回は、就職活動でのAI利用の実態を調査データで確認したうえで、書類選考で何が起きているのか、そして人事としてどのような対策を取ればよいのかをまとめました。

この記事の結論

学生のAI利用は、もはや止められない前提です。人事に求められているのは、AIの使用を見抜くことではなく、文章のうまさではなく「本人の経験と考え」を見る選考に作り変えることです。具体的には、AI利用の方針を示し、エントリーシートと面接の連続性を設計し、設問と面接の質問を見直すことが対策の中心になります。

就活生のAI利用の実態

株式会社マイナビの調査では、就職活動でAIを利用したことのある学生は、2027年卒で84.9%に達しました。2026年卒の66.6%から、1年で大きく増えています。今や「AIを使わずに就職活動をする学生」の方が少数派です。

項目2026年卒2027年卒
就職活動でAIを利用したことがある66.6%84.9%
使い方:エントリーシートの推敲68.8%71.8%
使い方:面接対策—38.4%
使う理由:作業時間の短縮62.6%54.3%

出典:株式会社マイナビ「2026年卒 大学生キャリア意向調査4月<就職活動におけるAI利用>」「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」

使い方で最も多いのは、エントリーシートの推敲です。2026年卒の調査では、エントリーシートの作成そのものに使った学生も40.8%いました。また、AIを面接官役にした模擬面接など、面接対策での利用も広がっています。

注目したいのは、使う理由です。「作業時間の短縮」が最も多い一方で、約3割の学生は「自分だけの考えで決めるのは不安だから」と答えています。AIは、単なる時短の道具ではなく、学生にとって「相談相手」になりつつあるのです。

書類選考で起きている3つの変化

AIの利用が広がったことで、エントリーシートを使った選考には、次のような変化が起きています。

  • 文章の質で差がつかなくなった:誤字脱字がなく、構成の整った文章が当たり前になり、「よく書けているか」で選ぶことが難しくなりました
  • 内容が似てきた:「主体性」「課題解決」など、同じような言葉や話の流れが増え、一人ひとりの個性が見えにくくなっています
  • 書類と本人の印象がずれる:書類の評価は高かったのに、面接で話を聞くと具体的なエピソードが出てこない、というケースが増えています

つまり、これまでのエントリーシートが測っていた「文章をまとめる力」は、AIで簡単に補えるようになりました。書類だけで合否を判断する仕組みのままでは、本当に採用したい人材を見落とすおそれがあります。

代表の経験談

ある企業の採用のコンサルティングに入ったとき、応募者のエントリーシートを一緒に読ませていただきました。誤字脱字もなく、構成も整っていて、一見すると全員が優秀に見えます。ところが、読み進めるうちに、「主体性を発揮し」「周囲を巻き込み」といった同じ言い回しが何度も出てくることに気づきました。採用担当の方も「書類では差がつかず、何を基準に選べばいいのか分からない」と悩まれていました。エントリーシートの役割そのものが変わったと考えるべきだと感じた出来事です。

AIの使用は禁止すべきか

「AIの使用を禁止すればよいのでは」と考える方もいるかもしれません。しかし、そもそもAIの使用を禁止することは不可能です。エントリーシートは学生が自宅などで書くものであり、企業がその書き方を確かめる手段はありません。また、文章の推敲だけ、アイデア出しだけといった使い方まで含めると、どこからが「AIを使った」にあたるのか、線を引くこともできません。そのうえで、禁止をおすすめしない理由は次のとおりです。

  • 見分けることが難しい:AIが書いた文章かどうかを、確実に見分ける方法はありません。判定ツールの結果だけで不合格にすると、自分で書いた学生を誤って落とすおそれがあります
  • 正直な学生ほど不利になる:禁止しても使う学生は使います。ルールを守った学生が損をする仕組みになりかねません
  • 入社後はAIを使って働く:多くの職場で、AIを上手に使う力はむしろ求められるようになっています

大切なのは、禁止か自由かの二択ではなく、「どこまでなら使ってよいか」を企業としてはっきり示すことです。

人事が取るべき5つの対策

1. AI利用の方針を示す

募集要項やエントリーシートの案内に、AIの使い方についての方針を書いておきます。学生の迷いをなくし、選考の公平さを保つことにつながります。

  • 例:「誤字脱字の確認や文章の整理にAIを使うことは問題ありません。ただし、書かれている経験や考えは、ご自身のものを書いてください。面接では、エントリーシートの内容について詳しくお聞きします」

2. エントリーシートと面接の連続性を設計する

多くの企業では、エントリーシートと面接が別々に運用されています。書類選考で読んだ内容が面接官に引き継がれず、面接では毎回「自己紹介をお願いします」から始まる、というケースも少なくありません。これでは、AIで整えた書類と本人の実際の経験を照らし合わせることができません。

そこで、エントリーシートと面接を「一続きの選考」として設計します。

  • 設問と質問をセットで作る:エントリーシートの設問ごとに、面接で深掘りする質問をあらかじめ決めておく
  • 深掘りのポイントを引き継ぐ:書類を読んだ担当者が、「この経験のここを詳しく聞いてほしい」というメモを付けて面接官に渡す
  • 選考の段階ごとに確かめることを分ける:一次面接は「書かれた経験が本人のものか」、二次面接は「その経験から何を学び、どう活かすか」というように役割を決める
  • 面接の記録を次につなげる:面接で分かったことと、まだ確かめられていないことを記録し、次の面接官に引き継ぐ

書類と面接の内容を照らし合わせるのは、AIの使用を見抜くためではありません。書かれている経験が、本人の言葉で語れるものかどうかを確かめるためです。

代表の経験談

ある企業の採用のコンサルティングに入ったとき、書類選考と面接を別の部署が担当していて、面接官はエントリーシートをほとんど読まずに面接に臨んでいました。そこで、設問ごとに深掘りの質問を用意し、書類担当から面接官へ「確かめてほしい点」を引き継ぐ仕組みに変えました。すると、面接で具体的な話を引き出せるようになり、「書類の印象と入社後の活躍が一致しない」という悩みも減っていきました。

3. 設問を見直す

「学生時代に力を入れたこと」「自己PR」のような一般的な設問は、AIが最も得意とするものです。本人にしか書けない内容を引き出す設問に変えます。

これまでの設問見直した設問の例
学生時代に力を入れたことを教えてくださいその経験の中で、一番うまくいかなかった場面と、そのとき実際に取った行動を教えてください
あなたの強みを教えてください周りの人から言われた言葉の中で、印象に残っているものと、その理由を教えてください
志望動機を教えてください当社の説明会や社員との会話で、印象に残ったことを一つ挙げ、ご自身の考えを書いてください

ポイントは、「具体的な場面」「失敗や迷い」「自社との接点」を聞くことです。AIで整えることはできても、経験していないことを書くのは難しく、面接での深掘りにもつなげやすくなります。

4. エントリーシートの役割を変える

エントリーシートを「合否を決める資料」から、「面接で深掘りするための材料」へと位置づけ直します。

  • 書類選考では、応募の条件や最低限の内容を確認する程度にとどめ、早い段階で本人と話す機会を増やす
  • 適性検査や、短いグループワークなど、書類以外の材料と組み合わせて判断する

5. 面接で「経験の中身」を深掘りする

AIで整えた文章でも、本人が実際に経験したことであれば、質問を重ねても具体的な答えが返ってきます。逆に、表面的な内容であれば、2〜3回深掘りすると答えに詰まることが多くなります。

  1. 状況を聞く「そのとき、チームは何人で、あなたの役割は何でしたか」
  2. 行動を聞く「具体的に、あなたは何をしましたか。最初に取った行動は何ですか」
  3. 考えを聞く「なぜ、その方法を選んだのですか。ほかの方法は考えましたか」
  4. 結果と学びを聞く「結果はどうでしたか。もう一度やるなら、何を変えますか」

このように、過去の行動を順番に聞いていく方法は「行動面接」と呼ばれます。AI時代の選考では、特に効果的な方法です。

企業がAIを使うときの注意点

一方で、企業の側が選考にAIを使う動きも広がっています。ただし、学生の受け止め方には注意が必要です。マイナビの調査では、企業からAI面接を案内されたときに受験意欲が下がると答えた学生は51.1%でした。理由は「人に評価してほしいから」「AI(機械)に判断されたくないから」が上位を占めています。

  • AIに任せやすいもの:応募書類の整理、面接日程の調整、よくある質問への回答、面接記録の要約など
  • 人が担うべきもの:合否の最終判断、面接での対話、自社の魅力を伝えること

AIは、人事の事務作業を減らし、学生と向き合う時間を増やすために使うのがおすすめです。AIを使う場合は、その目的と範囲を学生に伝えておくと、不安を和らげることができます。

まとめ

  • 就職活動でAIを使う学生は8割を超え、エントリーシートの推敲が最も多い使い方になっている
  • 文章の質で差がつかなくなり、書類だけで判断する選考には限界がある
  • AIの使用は禁止するより、「どこまで使ってよいか」の方針を示すほうが現実的
  • 対策の中心は、AI利用の方針の提示、エントリーシートと面接の連続性の設計、設問の見直し、エントリーシートの役割の見直し、面接での深掘り
  • 企業がAIを使う場合は、事務作業の効率化に使い、判断と対話は人が担う

出典:株式会社マイナビ「マイナビ 2026年卒 大学生キャリア意向調査4月<就職活動におけるAI利用>」(2025年5月)
株式会社マイナビ「マイナビ 2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」(2026年5月)
マイナビキャリアリサーチLab「2027年卒 大学生キャリア意向調査4月<就活生のAI利用について>」

加藤 貴之
この記事を書いた人 加藤 貴之株式会社Cradle 代表取締役

大手保険会社の人事部で研修・採用を担当後、米国Purdue University/Boston UniversityでMBA(HR専攻)を取得。三菱UFJ信託銀行、株式会社HRガバナンス・リーダーズでの人事コンサルティングを経て、2021年に株式会社Cradleを設立。MENSA JAPAN会員。

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